飛空艇シュトラール

以前とは比べものにならない程騒がしい
どうしてこうなってしまったのか
考えてみても思い当たるのは一つしかない



do one's best





「あ、ヴァン何かすることない?」

さっきからこの調子で誰かれ構わずそう聞いては
手伝いをしようとする

「おはよう、バルフレア」

「さっきも言っただろう」

「私にさせること何か決めたの?」

「ない」

「またそれ。考えてくれてないでしょ」

「無いんだから仕方ないだろ」

の方向を向かずに机にある地図を見ながらペンを走らせている

「あっそ、じゃあいいわ、勝手に何かするから」

「・・・・・・・・」

スタスタとドアにに歩いていきは去り際に大きい独り言を
残してその場を立ち去った

「飛空艇の掃除でもしようかしらー」

「―おい!!っちょ待て!!

バルフレアがそっちを向いた見たときには扉が閉まった後で
すぐに追いかけたが、見当たらず結局探す羽目になった

「なんでこうなるんだ・・・・」



こんな事になるくらいならいっそ買出しでも
頼んでおくべきだったと今更ながらに思う。

他の奴には臨機応変に対応できるのに
何故かそれが通用しない
気にしなけばいいものをさっきみたいな突拍子もなく
恐ろしい事を言い出すからそれも出来ず。

思いっきり彼女のペースに俺は嵌っているのだ





「ぅあっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

「今度は何だよ」

軽く舌打ちをするものの大事な飛空艇が
壊されたのかと不安がよぎり走り出す


「おいどうした?!

「み、見てこれ!!かわいすぎる!!」

振り返るの両腕にがっちりと締め上げられているのは



「――・・・・・・・ノノかよ」

「すごいフサフサね。んー気持ちいい」

「うちの機工士なんだから手荒に扱うなよ」

「そんなことも出来ちゃうの?すごいのね」

はノノを下ろししゃがみこむ
何だか企んだような笑顔を浮かべて切り出した一言に驚き
その後に続いた言葉に、してたられたと眉を顰めた

「バルフレアは優しいから何もしなくていいって言うのだけれど・・」

ノノの小さな手を取り慈愛に満ちた笑顔でゆっくり話を続ける

「何か手伝える事ない?何でもするわ」

「待て、それはダメだ」

ここに来たのも、俺が居るのもこの為。
艇の主である俺にここで働く承諾をえる為だったのだ

「騙されたのは俺か・・・」

「これからモブ討伐に行くんでしょう?フランから聞いたわ」

「謀ったな」

「気をつけてね、いってらっしゃい」


無理矢理見送られ止めることすら出来ず
結局そのままその場を後にせざる終えなかった

帰ってきたときに自分の愛機が無残な姿になっていない事を願って―






バルフレア達が飛空艇を出発した後はノノに指示された通りに
助手として簡単な仕事をさせてもらっていた。

「あともう少しだから頑張るクポ〜」

「分かったわ、がんばりましょ」

は梯子を使って上に登り
ノノはモーグリ特有の小さな羽根を羽ばたかせ
下へと降りていった


「バルブを回すクポ〜」

「二番バルブでしょ?ちょっとまって今弛めるわ」

持っていたスパナを使いボルトに掛けたが
思いのほか固く閉められていて中々開かない


「固っ・・・・・・・」

「どうしたクポー?!早くしないと気圧が偏よるクポー!」

「っつう〜もっちょっとだから待っ―」



スパナを持っている自分の手に誰かのそれが重なり
そのまま下に押され、いとも簡単に開いてしまった。
目線を上にあげると何か言いたげな表情で私を見ている

「バルフレア、ありがと・・ってちょっと」

「離れろ、

腕を肩にまわされそのまま後ろに引っ張られ
その直後、熱そうな蒸気がバルブから漏れ出してきた


「ったく、危ねーだろが火傷するとこだったぞ」

「間一髪だった」

「出来ないなら最初に言っておけ、怪我してからじゃ遅いんだぞ」

「ごめんなさい、軽率でした」

「守れよ」

「分かったわ、だからもう離してくれてもいいと思うのだけど」

「手伝ったんだからその料金だ」

「でもこれ以上は無理」

「そこまで毛嫌いするなよ」

「違うわ、ヤケドしちゃうじゃない」

「?してないだろ」

「バルフレアによ」

「―・・・この」



そのセリフを聞いて手を離した隙に
バルフレアの方を向いたら笑われてしまった

「な、何よ」

「それだけ頑張ってたって事だろ?」

伸ばされた手が私の顔を包み親指で頬をなぞる

「オイル付いてたぞ」

「あ、ありがとう・・」

出来る事をしようとしたのに結局
助けられてしまっているなんて。
何だかどうしようもなく申し訳なってきた

「いじけてるのか?」

「私だってヘコむ事はあるわ。
 お礼がしたいと思ってやったのに結果これだもの」

「なら他の方法にしとけ」

「そんな事言っても」

「今晩俺に付き合うとかな」

手を腰に当て片手はグラスを持つ仕草
片方の眉を上げ返事を促す

「愚痴をこぼすかもしれないわよ」

はにかみながら笑ったの顔は今までになくとても穏やかだった。
きっと馴れない場所での生活が彼女を不安にさせていたのだろう。

「いいさ、何でも聞いてやる」


俺は口説かれた側だ。